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サッカー選手を夢見る魚

執筆者の写真: NOANOA

「昼に夢を見る者は危険である。必ず夢を実現しようと行動するからだ」―― T.E.ロレンス


 世の中には、突拍子もないことを実行に移す者たちがいる。

 常人であれば決して発想しない(思いついてもすぐ忘れてしまうような)目的のために、人生を費やして挑戦する者のことである。例えば『プロジェクト・グリズリー』(96年)というドキュメンタリー映画では、対グリズリー・スーツの自作に情熱を燃やす人物が描かれている。また、近年話題になったニコラス・ケイジ主演『オレの獲物はビンラディン』(16年)というコメディ映画は、実際にパキスタンへと飛んで一人でオサマを捕らえようとした男性の実話を脚色したものだ。多くの人々は、彼らを変人だと嘲笑するかもしれない。だが、世間に何といわれようが自身の信じる道を突き進む姿に、一種の羨望を抱いてしまうのも事実である。歴史上の偉人を鑑みても、天動説を唱えたため処刑されたブルーノなど、世間からの評価が必ずしも正しいとは限らない。むしろ変人とされる者こそ、無限の可能性を秘めているとは思えないか。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14年)を象徴する「 思いがけない人物が、思いがけないことをするものだ」という台詞は、まさにそのこと表している。歴史に名前を刻みたい。後世には偉人だと評価されたい……そういった願望は、誰にでもあると思う。問題は、常識に囚われず実行できるかである。

 すでに誰かが達成していることを真似ても意味はない。先駆者に憧れるのは構わないが、それだけだと成功をおさめても二番煎じの評価がつきまとう。たとえ馬鹿馬鹿しいと感じる目的であっても、前人未踏の道を踏みしめていくことに意味があるのだと思う。

「他人と同じことをしない」というのは、俺の人生における原則である。

 しかし、人類の歴史は長い。よほど革新的なことでない限り、あらゆるジャンルにおいて誰も試していないことなど存在しない気もする。ぶっちゃけた話、PUNCH DRUNK LOVEのアピール・ポイントの一つ「楽器が弾けないバンド」というのもゴールデンボンバーさんがすでにやっている。しかも、向こうは卓越したコメディセンスがありイケメン揃いというモンスターバンドだ(実際のところは、多種多様な楽器を演奏できる鬼龍院さんが作成し、音源ではeversetのtatsuoさんが演奏しているらしい。Fコードを押さえられる者が一人もいない俺たちでは、周回遅れで後を追うどころか二足歩行すら難しいだろう)。

 しかし、いくらゴールデンボンバーが好きだから(※新作買いました)といっても、同じコースを走ろうとする必要はない。俺たちには、俺たちにしか立てないステージがある。

 では、どうすれば前人未踏の道を見つけることができるのか?

 容易なことではない。神の啓示を待つしかないという意見もある。もっとも手っ取り早いのは、誰かが冗談で言った話を実行に移すことだ。「不可能だ」や「あり得ない」といったワードにアンテナを張っていれば、素晴らしい与太話に巡り会うこともはずだ。反対に、「これはやりたくない」と思ったことを書き連ねて、上から順番に挑戦してみるという手もある。アイディアのゴミ箱に、どんなダイヤの原石が眠っているかわからない。

 荒涼とした砂漠にも似た現代社会では、誰もがアイディアを求めてさまよっている。

 肝心なのは、不可能だからと諦めないこと。無意味だと思わないこと。

 将来的に誰かが成し遂げるだろうと、他人をあてにしないこと。

 ――人はそれを夢想家と呼ぶのだ。

 

 思ったより真面目な話になってしまった。冒頭に挙げた『オレの獲物はビンラディン』で描かれた人物、ゲイリー・フォークナー氏が実際に残した言葉を引用して記事を締めくる。


「いずれ誰かがやることなら、俺がやっても文句はないだろう」


 そういうことだよ、DRUNKERS。






 
 
 

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